有限会社 人事・労務『儲けを生み出す人事制度 7つのしくみ』

「人事制度の本」として通り過ぎてしまうのはもったいない!
自分が何に基づいて評価されているのか分からない一般社員、部下の評価をしなければならない管理職、そして会社で働く全ての人員に能力発揮してもらいたい経営者…
組織のモチベーション向上・活性化に興味のある全てのビジネスパーソンに読んで欲しい一冊。

儲けを生み出す人事制度7つのしくみ―感動の人事制度はこうつくれ! (Nanaブックス)

儲けを生み出す人事制度7つのしくみ―感動の人事制度はこうつくれ! (Nanaブックス)

  • 作者: 矢萩大輔,瀧田勝彦,畑中義雄,金野美香,人事労務
  • 出版社/メーカー: ナナコーポレートコミュニケーション
  • 発売日: 2006/03/01
  • メディア: 単行本
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単なる成果主義は短期的な成果に飛びつく社員を大量に生産するという弊害を生みがちである。
その問題を解決するために著者が主張するのがES(Employee Satisfaction)。
これをどう人事制度に組み入れていくのかについて説明している。
が、淡々と人事制度の構築方法について書かれた本ではない。
一つ一つの制度について「なぜそれが大事なのか」という事を経験や豊富な例を用いて説明してくれているため、人事制度の本でありながら捨てページの無い自己啓発書のような読み方もできるつくりになっているのだ。


エッセンスを紹介
※この本は一冊丸ごと読み込む価値があると思うので興味が湧いたらご一読をお勧めします


社員満足が高く自律した社員が多い事が、現在成長している会社で恐ろしいほど共通している点。
 社員満足を高める為には、運用する場面でちょっとしたコツのようなものが必要。
成果主義=過去の成果に対してお金で報いる、という考えでは会社の業績が伸び続けない限り運用できない。
 また、社員にはそれぞれの立場において、「今の成果」のための行動を求めると同時に
 「将来の成果」のための行動も取ってもらわねばならない


強い組織をつくる「7つのしくみ」とは


(1)目標管理(成果の評価)
 ・経営理念や会社の中長期目標を各社員の具体的な仕事に落とし込む事が出来るようになる。
 ・面談を充分な時間をかけて行う事が何より大事。目的によって面談手法を使い分ける。
(2)プロセス評価(近い将来の評価)
 ・会社が発揮して欲しいと考える、業績向上に直結する能力を伝え、社員にその手法をしっかりと学んでもらう。
  これにより、過去の成功体験、会社としてのノウハウを次世代の社員に継承していく事ができる。
 ・期待する発揮能力の抽出及び等級ごとの必要性を決定
(3)執務態度評価(遠い将来の評価)
 ・業績、業務に直結しないことであっても、会社の一員としてずっと同じ方向に向かって仕事をしていくためには
  最低限共有しなければならない事がある
 ・執務態度四大項目「規律性」「責任制」「積極性」「協調性」を軸にシートを作成。
(4)人事考課((1)〜(3)で集められた情報をもとに総合的な判断を行い、次の(5)〜(6)に反映)
 ・よく中小企業の社長は「うちは小さいから人事考課は必要ない」という。
  確かに中小企業の場合は人数が少ないので社員の行動が常に把握出来る。
  しかし把握しているだけではダメ。その仕事ぶりに対し、社長がどう思っているかを社員に伝える必要がある。
(5)処遇
   …人事考課の結果に基づき、昇級・賞与などの金銭的な報酬に反映、昇格による職務等級のランクアップを行う。
(6)配置転換
   …人事考課の結果に基づき、会社の将来的な人事戦略や本人の希望なども考慮に入れて、
    現時点で最も効果的な人員配置を行う。
(7)教育訓練
   …人事考課の結果に基づき、会社の将来的な戦略や本人の希望を考慮し、必要な教育訓練を実施。
 

印象に残った部分を紹介


・仕事は3〜5年は徹底的にやりきる時期がなければならない。そうすれば仕事のコツのようなものが掴める。
それと同時に、自分はここまで頑張れるのだという自信がつく。
さらに、この期間に何度かの成功を体験しているだろうから、仕事を成し遂げることの感動や喜びも知っている。
このレベルまできた社員は、勝手に自分で仕事を作り出して成果を出していく。


・社長は執務態度の項目に「うちの社員にはこういう人間になってもらいたい」という思いを込めるべきです。
「執務態度」の項目を通して、人生を伝えていくべきなのです。


・人は仕事によって磨かれ自分の持っている力を発揮できるようになって初めて、
 自分に向いている仕事に出会う事が出来る。


・ある会社で研修の募集をしたら、必要と思われる人は応募してこずに、その研修を受けなくても良いと思われる優秀な人ばかりが応募してきた。
学ぶ事に貪欲な人はどこまでも貪欲で自分の人生を充実させていくが、新しい事を学ぶ事に興味が持てない人はいつまでたっても自分の枠を破れず、成長が止まってしまう。


・多くの事を楽しみながら学んでいる人の共通点は、聞く事・見るもの全てを「自分にとってどんな意味があるのか」という事に関連づけて考える、「意味付け力」に優れていること。


所感


私が所属する組織ではこういう制度関連は既に整った形で運用されているのだけれども、「目標管理シートのあの項目がなぜ織り込まれているのか」「なぜ面談にあんなにも時間を割くのか」といった人事面での知識、「キャリアの作り方、天職との出会い方」などの構えの部分など、得るものが多かった。評価制度の概要を掴めたのは嬉しい。それから、なぜ評価シートにその項目が入っているのか?という素朴な疑問、制度変更の時に賃金担当と評価担当が協調してやっていく理由などもよく分かった。心構え等も、後輩指導に役に立ちそう。